こんにちは、エミリーです。 ブログ全体の目次
はじめに
今日は私の大好きな外注費7%問題について語らせてください。複数の論点が登場し、どれも複雑な話なので、全員が理解できる記事ではないかもしれません。すみません。わかっていただける方はぜひ語り合いたいです…!
- はじめに
- 外注費7%上昇問題
- 「外注費が7%上昇する」とは
- 事例Ⅳは数学ではない
- 「ゆらぎがある日本語の中でも自然な解釈は一つしかない」亜種
- 外注費7%再び
- 受験生の混乱
- 混乱受験生の課題
- 自然な解釈の主観性
- 二次試験の許容度と多様度
- まなびとしての方針
- そんな事例Ⅳへのアプローチ
- おわりに
外注費7%上昇問題
題材のH30事例Ⅳ第3問。ざっくり言うと、以下のような問題です。
「外注費が7%上昇する」とは
この時、「外注費が7%上昇する」という日本語には、いくつかの解釈が存在すると思います。
上記赤枠を、どう計算するか?
今年度の外注費は782百万円。今年度の外注費率は52.03%。
- 来年度外注費=782百万円×1.07
- 来年度外注費率=52.03%×1.07 として計算する
- 来年度外注費率=52.03%+7% として計算する
みなさんはどの解釈が正しいと思いますか?
事例Ⅳは数学ではない
私がこの問題を好きな理由
個人的な話になりますが、私はこの問題をきっかけに事例Ⅳは数学ではないと理解することができました。
恥を忍んで晒します(n度目)最初にこの問題を解いた時は、設問の曖昧さに怒り狂っていましたが、FFさんのあじまるさんからのコメントで自然な解釈は1つしかあり得ないことがわかり、反省しました。あじまるさん、その節はありがとうございました!
不親切だと思い込んで皮肉を言う私(恥)https://t.co/1t0ttXbZtl
— エミリー@まなび生産性向上 (@emily_study_) 2025年3月6日
悪問だとこき下ろす私(恥)https://t.co/Yfxphse5pg
— エミリー@まなび生産性向上 (@emily_study_) 2025年3月6日
真実に気付いた私 https://t.co/glYlsSNEKJ
— エミリー@まなび生産性向上 (@emily_study_) 2025年3月6日
— エミリー@まなび生産性向上 (@emily_study_) 2025年3月6日
ここで私が得た学び:事例Ⅳというのは、一意に定義される数学とは異なり、一意に定義されないゆらぎがある日本語の中でも「その計算は現実だとどういうシチュエーションなのか?」を想像すると自然な解釈が一つしかないので解ける。つまり、事例Ⅳは数学ではない。
「ゆらぎがある日本語の中でも自然な解釈は一つしかない」亜種
わかりやすい例としてH29の第2問も紹介させてください。とある一文が、日本語の構造にだけ着目すると2通りの解釈が存在してしまいます。
日本語だけに着目すると決め手に欠けるのですが、内容・文脈を考慮すると解釈①が正しそうだとわかります。
60%を占める大口取引先の材料だけが高騰し、残り40%のその他の材料費が高騰しない理由がないからです。高騰しない材料があるならそれを使いたい。
解釈②の言い分:D社は「得意先、素材の変化に対応」しているようだし、大口取引先に売る分の材料を大口取引先から仕入れているのでは?
↑だとすると材料は購入せず「加工」サービスを提供するのが自然。やはり解釈②は不自然。
といった感じで、解釈①に収束すると思います。
外注費7%再び
以上を踏まえて、もう一度H30の問題に戻りましょう。
日本語から特定することをやめて、ゆらぎがある日本語の中で「その計算は現実だとどういうシチュエーションなのか?」を想像するとどうでしょうか?
解釈①
解釈①:売上が1,503百万円から2,053百万円と137%になっているのに、変動費である外注費が107%にとどまるのはおかしいです。
変動費とは
ちなみに「変動費」というのは、操業度に応じて増える費用のことを言います。簡単に言うと「商品を1つ売るごとに増える費用」のことです。
確認テスト:春と夏で価格が変動する光熱費は、変動費でしょうか?固定費でしょうか?
答え:固定費です。 ←古のインターネット老人
解釈②
解釈②:外注費率が107%になるというのは、つまり外注費の単価が107%になるということです。
(イメージ)これまで売上10万円の案件ごとに外注費を約5万2千円をお支払いしていたが、来年からは約5万6千円に値上がりする。←このことを「外注費が7%上昇する」と言っている。
とても自然な解釈だと思います。
解釈③
解釈③:外注費率52.03%+7%=59.03%
これが言いたいのであれば「7ポイント」のような言い方をしますし、外注費率はあくまでも私たちが算出した値であって、このことを「外注費が7%上昇する」と言うのはかなり無理があると思います。
結論
以上より、表面的に日本語を読むだけでなく、「その計算は現実だとどういうシチュエーションなのか?」を想像すると、解釈②が自然であることがわかると思います。
受験生の混乱
ここに、別の論点が絡み合って混乱を生んでしまいました。
混乱1
私の主張「解釈①〜③のうち、解釈②が自然ですよね」
混乱受験生「自分の解き方には「782×1.07」という掛け算が登場しているので、これは解釈①ということでしょうか?」
↑その方は解釈②計算をしていました。ただ、計算の一部に「782×1.07」が登場しているという理由だけで解釈①だと捉えてしまいました。つまり、自分が全体で何の計算をしているのかわからず目先の数字を計算していって、たまたま正解できたり(できなかったり)しているのではないでしょうか?これは解釈①〜③のどれを採用するか?という論点とは全く別の話をしています。
混乱2
解釈②の計算方針は大きく2つあります。
A.今年度の売上1,503百万円を分母にして変動費率を計算する方針と、
B.来年度の売上2,053百万円を分母にして変動費率を計算する方針です。
「来年度の変動費率を求めよ」という問題なので、まずはBの方針を思いつくのが普通だと思いますが、Aでも同じことなので正解ですし、なんならAの方が手間は少ないです。
ただ、解釈①〜③問題がわからない人にとっては、余計に混乱を生む論点になっていることでしょう。(Bの解き方ができれば十分です)
混乱受験生の課題
最悪「解釈①〜③のどれが正しそうか」という判断は間違えても良いと思うのですが、少なくとも「自分がした計算が解釈①〜③のどれを計算しているのかわからない」「模範解答が解釈①〜③のどれなのかわからない」という問題は解消しておきたいです。
どうしてそうなってしまっているのでしょうか?
私は、自分が何をしているかわからず目先の数字を計算してしまっているからだと思いました。
見通しの筆考
事例Ⅳでは、いきなり目の前の数字に飛びつくのではなく、まず日本語で見通しを立ててから、ようやく計算に着手するようにします。(詳細:事例Ⅳの勉強方法)
※著作権フリーのt-hom’s diary様のコードを使わせていただきました。ありがとうございます。URL
数式の逆翻訳
上記の見通しは問題を解く時に力を発揮します。解き終えた問題のふりかえり時にやることとしては、「数式の逆翻訳」が良いと思います。
自分の計算式や模範解答の計算式を、日本語に逆翻訳するのです。
計算式を見ずにその日本語だけを読んで、何のために何の計算をしているということなのか理解しようとしてみてほしいです。不明点があれば聞いてください。
スタンス
混乱受験生の特徴として、
- 木を見て森を見ず
- 短絡的
という傾向があると思います。
木を見て森を見ず
事例Ⅳでは一部の計算式だけで全体を判断してしまっている。他の科目でも文章全体を読まず「キーワード」だけを拾ってしまっている。
枝葉のみを拾うのではなく、木の幹の構造を理解するようにします。
短絡的
一つ一つの問題が何をしているのか理解することよりも、とにかく正解して早く次に進めなくてはという焦りが強いでしょうか。もちろんこれはバランスなのですが、本番で点数が取れないくらい理解が浅いまま次々進めても点数は上がらないですよね。だったら、本番の点数が上がるような勉強を、自分なりのスピードで進めるしかありません。
私の感想ですが、決して理解力が低いわけではないのに、早く終わらせて次に行きたい気持ちが強すぎて、深い理解に着手しないストッパー・メンタルブロックがある?と感じることがあります。
その人が怠け者とか頭が悪いとかではなく、世の中に短絡的な試験が蔓延している背景も影響しているでしょうか。短絡的な試験に慣れすぎてしまって、短絡的に暗記することが試験勉強だと思い込んでそれをがんばってしまっている。
せっかく本質が問われるおもろい試験に挑戦するのですから、ぜひ短絡的な試験勉強を脱ぎ捨てて、本質を理解する試験勉強で学ぶことの楽しさを味わってほしいです。
炎上覚悟で言いますが、診断士試験の点数が上がらない人は「短絡的」です。
— エミリー@まなび生産性向上 (@emily_study_) 2025年3月9日
短絡的とは、物事の本質や筋道を深く考えずに、原因と結果などを結びつけてしまうこと。…
自然な解釈の主観性
ここからはまた別の話をします。
これまで自信満々に解釈②だけが自然だから解釈②を選べるんだよ〜と主張してきた私でしたが、初めて全てを理解した上で「解釈①だって別に変では無い」という方にお会いしました。ギャクサンの山子さんです。
今更ですが、これ私、本番で①で間違えました。②なら「外注費“率”が7%」が日本語として正しい。③なら7%ではなく“7ポイント”と書く。①は日本語として正しいし、外注比率の低下は、新たな支店は外注が少ないのだなと理解。未だに理解できてないです。 https://t.co/KoFM5BEYHz
— 山子 顕|ギャクサン (@yamakoken) 2025年3月7日
山子さんとDMでやりとりさせていただき、この件について「わかっている人」と「異なる立場」で議論するのが初めてで、めちゃくちゃ楽しかったです。笑
山子さんの主張
- 事例Ⅳが「ゆらぎがある日本語の中でも自然な解釈を絞り込む」試験であることは理解した上で、この問題はそれが少し上手くなかったかなという印象。
- 「外注費」という単語は勘定科目の名称であり、外注費の総額を表すのではないか。損益計算書を来期予算と2期並べて、「外注費が来期は今期より7%増えそうだ」と表現する場面はごく自然にある。
- 解釈①はサービスラインの多さや新支店の出店と次の問題にも関わる損益構造にもつながる点から前期と異なる動きをしていることが想定され、その一端が外注費率の低減に現れたと解釈できる。つまり、解釈①の外注費率の低減はそこまで不自然ではない。
特に3つ目の主張が、私にとっては目から鱗でした。そして、
- 「自然さ」には主観が入る余地があり、絶対的なものではないこと
- 自然な解釈は②しかないから②だと決めつけていた自分の愚かさ
に気付くことができました。
※同じ解釈①でも外注費率低減の構造に気付かず浅はかに外注費を1.07倍しているのとは違う話をしています。
二次試験の許容度と多様度
二次試験には(一次試験などと比べて)許容度と多様度が高いという特徴があります。そういう特徴があることがふぞろいから推測できます。
許容度
R2 事例Ⅳ 第4問 設問2のふぞろい統計において、完全に正解した人は233人中1人のみで、とある条件を漏らした惜しい解答の人は233人中87人でした。
完全正解5点に対して、惜しい解答にも3点の部分点が入っているのではないかという推測です。
多様度
R3 事例Ⅲ 第4問では、「C社社長は、①自社ブランド製品を熟練職人の手作りで高級感を出すか、それとも②若手職人も含めた分業化と標準化を進めて自社ブランド製品のアイテム数を増やすか、悩んでいる。①②のどちらを選び、どのように対応するべきか、助言せよ。」といった設問があります。ふぞろいからは①の方が高得点だが、②を選んでも加点されると推測されます。
外注費7%における許容性と多様性
山子さんの解釈①も私の解釈②も、多様性の中でどちらも加点されるでしょう。
外注費率低減の構造に気付かず浅はかに解釈①の計算をしてしまった人も、許容性の中で部分点は入るでしょう。
※この問題においては山子さんも浅はかな人も最終的なアウトプットは同じなのですが、根拠を述べる系の問題ではきちんと根拠を明示するのが良いですね。
まなびとしての方針
私は、公式の正解が公表されていないのを良いことに(?)様々な予備校が「嘘」を教えていることに問題意識を持ってこの活動を始めたのでした。少なくとも滅多にいない300点超え合格者である私が明らかに間違っていると感じる内容を、私より点数が低いであろうどなたかが決めつけて指導している。(煽り)既存の予備校はそうならざるを得ない構造を含んでいることから、そのスタイルの限界を感じ、起業したのでした。
そのため、まなび生産性向上は「無知の知」を表明し、統計データであるふぞろいから真摯に逆算して学ぶべきという主張をしています。
二次試験についての動画でも詳しくご説明しています。
それなのに、浅はかな解釈①に対峙し続ける中で、解釈②だけが絶対的であると決めつけていた自分がいたことを反省します。
- 「自然さ」には主観が入る余地があり、絶対的なものではないこと
- 自然な解釈は②しかないから②だと決めつけていた自分の愚かさ
改めてふぞろいに立ち戻って考えると、
- やはり解釈②の方が多数派であり、自然・安全・高得点だと考えられる。
- とはいえ、多様性の中で解釈①も加点対象。
という学びになります。
R3 事例Ⅲ 第4問が
- 「熟練職人手作り高級感」の方が自然・安全・高得点だと考えられる。
- とはいえ、多様性の中で「若手職人標準化アイテム数増」も加点対象。
というのと類似の構造でしょうか。
そんな事例Ⅳへのアプローチ
クリアしたいレベル感
とはいえ、解釈①を採用している受験生のほとんどは、山子さんほど全てを理解して①を選んでいるわけではない、というのが私の見解です。レベル1は必ずクリアしたいところです。目先の数字をテキトーに掛け算して偶然正解できたりできなかったりするレベル0では本番の試験に太刀打ちできません。レベル2は伸び代です。レベル2をクリアできるとCVPで解けない問題はなくなるはずです。
- レベル0:自分が何をやってるかわからず偶然正解できる時がある
- レベル1:自分が何やってるかわかる(MUST)
- レベル2:私が何言ってるかわかる(WANT)
- レベル3:全てを理解した上で①か②のどちらを選ぶかは多様性。
パニックを回避する筆考
事例Ⅳはこのように複数の解釈が考えられるため、試験本番パニックになって手が止まってしまう受験生が後を絶ちません。頭の中であれこれ考える「暗考」をするとパニックで手が止まってしまうため、書いて考える「筆考」で、場合分けして進めるのがコツです。
3月、4月、5月、8月に開催する事例Ⅳ特訓でも筆考を徹底的に訓練します。ぜひご参加ください。
脱・他責マインド
こういった一連の曖昧さを根拠に「診断士試験はクソだ」「ふぞろいはクソだ」という主張を見かけることがあります。
試験が悪い、ふぞろいが悪い、という他責マインドだと点数を上げるためのふりかえりができないんですよね。
いち受験生に試験を変えることはできないと思われますので、この試験を正と仮定した場合に自分はどうしたら点数が上がるのかという視点で成長するのが良いと思います。
長いこと、つまらない引っ掛けや難解な日本語で誤魔化した嫌な試験だと思ってきた
— ふへんもの┃闇を這いずり掴んだ光 (@fubennono) 2025年3月6日
でもそこに深い作問意図があると気付けてから、ほんとに良い試験だと思うようになった
それから勉強の質が格段にあがったと思う😇 https://t.co/XTDvu6pEY0
アンチアンチふぞろいについてはこちら
おわりに
以上です。
複数の論点が登場し、どれも複雑な話なので、全員が理解できる記事ではないかもしれません。すみません。わかっていただける方はぜひ語り合いたいです…!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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正しい勉強方法と本質的理解で事例Ⅳを得点源に変える事例Ⅳ特訓
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